Home 健康と温泉フォーラムとは 事業 組織
会員オンライン 情報ファイル お問い合わせ
目次 NEXT

日本の温泉地再生への提言 [6] -第1グループ 旅館・温泉地リーダー

温泉地のインフラの整備と個性化・高感度な温泉地づくり

加藤 昌利
(稲取温泉)稲取温泉旅館組合 理事


 東伊豆町は、伊豆半島東海岸の中央に位置し、変化に富んだ海岸線、緑深き天城連山、豊かな自然に囲まれ、大川・北川・熱川・片瀬・白田・稲取の湯量豊富な6温泉が存在する。古くは鎌倉・室町時代より海上交通の中継点として栄え、江戸時代には築城石として「伊豆石」を切り出し舟で運搬、江戸城築城に使われた。山海の産物に恵まれたこの地も、温泉発掘とともに観光地として徐々に知名度を上げ、伊豆急線が開通した昭和36年より急成長をとげた。各地区の宿泊施設の状況は、大川温泉6軒収容300名、北川温泉7軒1015名、熱川温泉20軒3811名、片瀬温泉7軒786名、白田温泉6軒270名、稲取温泉23軒4271名、合計78軒10733名である。
 年間約136万人の宿泊人員があり、各温泉地でのイベントもさまざまな趣向を凝らして地場産品や歴史を生かしたものとなっている。

 1月20日 雛のつるし飾り祭り
 2月下旬 大川自然やぶ椿観賞会
 3月 北川さかな祭り
 4月 熱川温泉桜祭り、稲取細野高原山菜狩り
 5月 大川温泉ほたる鑑賞の夕べ
 6月 どんつく祭り
 7月 熱川海上大文字焼き花火大会
 8月 ちびっ子フェスタ(さざえ狩り、 魚のつかみ取り、屋台、イベント)
 9月〜11月 伊勢えび祭り
 12月 熱川クリスマス花火ファンタジア

 宿泊施設、観光施設どちらも質・量ともに好評度の高い料理提供と、首都圏を中心に1泊2日圏内の周遊コースとして高稼働な地域である。


温泉地の再生のあり方

1.その昔、太田道灌が川辺で湯気が昇っていることに気付き近寄ってみると、ケガをした猿がそこで傷を癒していたそうです。それを見た道灌が温泉を発見したといわれている「熱川温泉」がこの東伊豆町にはある。東伊豆町の温泉質は硫酸塩泉を主とし、筋肉痛、神経痛、内臓疾患等広く効能がある。温泉湧出量も豊富であり、自然環境にも恵まれていることはとても大きな財産である。
 健康指向がより幅広く高まっている現代、治療法としての温泉を前面に出す地区と行楽としての温泉を前面に出す地区をはっきりとさせていくことも必要と思う。
 団体主流から個人志向へ、変化している旅行形態をとらえても、「温泉=心と体の癒し」をもっともっとPRの前面に出すべきであり、6温泉地各々の個性を生かして競合せず共鳴していくことが大切だと思う。

2.由布院は、全国第三位の温泉湧出量を持ちながら鄙びた田舎の温泉地にすぎなかった。このままでは衰退の道をたどってしまうと地元の旅館経営者たちが、そして町長がいろいろな情報をもとにひとつの目標に向け、いろいろな事に挑戦した。そして、温泉だけに頼らないで由布院のよさをいかし、独自の要素が複合的に影響しあうことで現在のスタイルを築き上げたそうです。
 他地区においても成功している良い例があるように、町全体でお客様を迎えている気持ちを伝える手段として、その温泉地の個性をまず視覚に訴えることは必要だと思う。そういった意味では、宿泊施設や観光施設のリニューアルだけでなく、車道、歩道、駐車スペース、街灯整備等、自然との共存を前提としたさまざまな環境整備は必要と思う。ただし、そこに暮らす人々がまず協力しあい、なぜ町全体の整備が必要なのか、どのような環境を作るべきなのか、ハード的な環境整備とともにソフト面が伴うようにビジョンを共有することが重要と思う。

3.ヨーロッパの温泉保養地その代表となるバーデン・バーデン、2000年以上の歴史を壊すことなくより発展させている。市民全体があるべき姿を共有し、ひとつの方向へ進んでいることの偉大さが感じられる。イタリアのアバノ温泉は、日本の温泉同様、個々のホテルが源泉を持ち、そ集合体が町並みを形成している。しかし、「温泉治療センター」がそれぞれのホテルに設置されており、顧問医の指導による治療を行っていることや、美容部門を設置しているホテルもあり、健康サービスを行うクアホテルであることが日本との大きな違いである。
 日本では、温泉保養地というと鄙びた湯治場をイメージするが、もっともっと「楽しむ」ことを取り入れて、温泉地も進化しなくてはならないと思う。また、休暇の使い方は個人レベルであるが、休暇制度の管理は国レベルで一考を要すると思う。

4.個性化の時代、どのような客層を呼ぶために町や施設をどうするのではなく、この町の個性を磨き上げて、これがわが町わが温泉地と誇れるものを作り上げることが、地域活性化の第一歩と思う。そして、そこに人が引き寄せられる、人が集まれば活気がみなぎる、よりよい環境を目指して活性化が進む。その町の歴史や自然環境は重要な財産である。地域の人々の心がそして地方行政が一体となってひとつの方向へ進むことは並たいていの努力では難しいであろう。しかし、「地域活性化のための町づくり」としていち早く実行できたところが勝ち組みに生き残れるのであろう。国は地域への再生(活性)支援をより積極的にしてほしい。そして、国民がもっともっと余暇を心から楽しめる社会環境整備に努める勉強をすべきであり、自治体も地域と国との掛け橋の役割を再構築する必要があると思う。


目次 NEXT
Copyright(c)2004 NPO法人 健康と温泉フォーラム All rights reserved.