NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
名湯百選 名湯百選

須川温泉 すがわおんせん

須川=慢性消化器病 神経衰弱症リウマチ性疾患慢性気管支炎心身症
真湯=リウマチ性疾患運動器障害 神経麻痺神経症 病後回復期

<所在地>須川=岩手県一関市厳美町祭蒔山 真湯=岩手県一関市厳美町字須川岳
<交通>須川=東北新幹線一関駅からバス1時間50分。真湯=一関駅からバス1時間
<泉質>須川=含硫黄-鉄-アルミニウム-硫酸塩酸(硫化水素型)真湯=単純温泉

温泉療法医がすすめる温泉 鈴木仁一
(東北大学心療内科助教授 心療内科主宰 前日本心身医学会会長)

栗駒8合目の湯治場"須川"。いいあんばい人気の蒸し風呂
「便利になったもんだ」昔は夜具から米、味噌みんな持って強力を頼んで"一関から西8里(32k)"(須川節による)の山道を二日掛りで登って来た。三陸海岸の大船渡から、かれこれ50年近く毎年欠かさず通い続けているという、この老夫婦、   湯治していたその場所は須川高原温泉である。岩手、秋田、宮城の三県にまたがる栗駒山。山の入口は、こっちの方だと互いに表玄関を主張しているが、須川高原温泉は岩手県側、標高1,120mの栗駒8合目にあり、ハイカ−の「ヤッホ−」の声が、こだましていた。

生きものの温泉、環境で効果を現わす
水道の水は死んだ水、温泉は生きた水だという。何百年、何千年もの間、地中に閉じ込められていた岩漿水と呼ばれる水と、地中深く浸み込んだ雨水が一緒になり、何もかもドロドロに溶かす6,000℃もあるマグマの力で地表に熱湯となって現われるのが温泉。地殻変動によって出来た、岩の割れ目などを通るとき、その岩の持つ成分が交じってさまざまの泉質となる。須川は、その昔大爆発した火口のそばから毎分6,000リットルも湧き出ている硫化水素を含む明ばん緑ばん泉で、しかも強酸性の温泉。生命をもった生きた水の温泉は、その成分の刺激作用と、温泉の場所の環境が合体して、それぞれ特有の医学的効果を現わす。   海抜300m位までの温泉は、保護性気候の要素をもっているので、どちらかといえば保養地向きのところが多い。この点1,000mを越す山岳部にある須川高原温泉は、紫外線が強い半面、平地と比べ6〜7℃の温度差があり、風が出たり霧がかかったりで極めて刺激的。加えて気圧が低く、酸素も薄い。清浄な空気のもと、こうした自然環境は身体にとって呼吸量がふえ、その呼吸もぐっと深くなって心拍数が増加し血液循環が盛んになる。この循環が造血機能を刺激し赤血球を増やす。同時に消化器系も程よく刺激され、「山で食べるオニギリはうまい」と言われる通り、食欲が出て丈夫な身体に、という図式になる。

原因不明の病気は意外にも・・・・・
東北地方の温泉地が、火が消えたようなさびれ方をした時代があった。「温泉なんかで病気が治せるか・・・・・・」という西洋医学の勢力である。これを救ったのが東北大学医学部。主要温泉のメンメンが鳩首会議の末、東北大の山川内科教室に陳情したのがはじまり。以来50余年、山川内科から同大学長、のちガン研病院長を勤めて高名をはせた黒川利雄の黒川内科、さらに山形内科、そしていま、鈴木心療内科へとバトンタッチされ、各地温泉での研究がいまも続いている。山川内科から始まって四代目、須川温泉の東北大学診療所で心身症の温泉療法と取り組んで早や25年たったという、鈴木仁一助教授に話をうかがった。   開口一番「心身症は精神病じゃないよ」、ひょっとしたら誰もがかかっているかも・・・・・・と。温泉療法は外科と違って地味である。同じ大学病院にいながら随分白眼視されたが、効果のほどは誰もが認めるまでになった。心身症は、胃ガンとか脳溢血という単一の病名ではなく、複雑にからみ合った現代の人間関係。セカセカした生活、疑心暗鬼などのストレスがたまって引き起こす心の病すべてが心身症。どんな病気も何らかの形で心理的影響をうけている。心と身体は一緒であり、ストレスという言葉が一般語で言われているほど療域は広くなってきていることだけは確かだという。

適応は、生活の知恵の言い伝え
心身症で入院生活を送った人達が心のリハビリと呼んでいる、須川での夏期合宿が今年も一週間づつ5週間行われた。山の夜明けは早く、5時過ぎには「お早よう」と全員集合。日課は自分と"静"の対面でもある座禅から始まった。このあと栗駒をバックに軽い体操、そして食事。9時診療、自由時間は人気の蒸し風呂で一汗かく。午後は近くの湖や山を散策、夜は「希望ある限り若く、青春は失望と共に朽ちて老いる」など医事講話や談笑会、すべて時間通りの規則正しい生活。   最後の日になるとすっかり生活リズムをとり戻し、全員元気に栗駒山頂を目指すという。一般の湯治客らは、どうだろう。「これが一番のたのしみ」というのがムシ風呂。直径7cm位の筒から噴き出す蒸気と温風をビニ−ルと毛布ですっぽりくるまっての素朴なサウナ。中にはリウマチという人もいたが胃潰瘍、胃炎、「腸がどうも・・・・・・」という人が圧倒的。昔からの言い伝えである"胃腸に効く名湯"が、役所で示した適応より正しいと信じられていた。

真湯温泉、衣替えして復活
栗駒は、高山植物の宝庫、清純可憐な白い花のヒナザクラ。珍しいナンブタカネアザミは北限種。ピンクの花冠り、ナンブクロウスゴは道端に咲くため心ない者にすっかり荒らされていると嘆く。夏は山好きの家族連れや若者のキャンプで賑わい、秋の紅葉は「日本で二番です」と。日本一というのはどこにもあるので二番目なのだそうだ。昔、須川で湯治を終えた人達が須川の"上り湯"、"戻し湯"と呼んで必ず立ち寄った所というのが『真湯温泉』。クルマ社会となって10年ほど前、姿を消したが、   つい近年、近隣一市二町の林業改善事業研修センタ−として復活、さらに名前も「真湯山荘」と改めてオ−プンした。刺激の少ない穏やかな弱アルカリ性単純泉で湯量も豊富。四季折々の景観もよく、森林浴をどうぞ・・・・・・と、谷川沿いに若者からお年寄り用まで、いくつかの遊歩道やテニスコ−ト、ゲ−トボ−ル場も新設。体力づくりの場として一般客にも開放した。真湯温泉から、ほど近い一関寄りにあるのが、渓谷美で有名な名勝天然記念物"厳美渓"。春の桜、秋の紅葉は素晴らしい。
 
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