NPO法人健康と温泉フォーラムは医療、環境、施設等、温泉保養地に関わるあらゆる分野における専門家を中心とした団体です。
温泉とは


1. 温泉

温泉は、昭和23年に制定された「温泉法」により、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭酸水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、次表の温度又は物質を有するものと定義されています。

温度
温泉源から採取されるときの温度 25度以上(摂氏)


物質(以下のうち、いずれか一つ)
含有量(1kg中)

蔵玉温泉
蔵王温泉
溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量1,000mg以上
遊離二酸化炭素(CO2) 250mg以上
リチウムイオン(Li+) 1mg以上
ストロンチウムイオン(Sr2+) 10mg以上
バリウムイオン(Ba2+) 5mg以上
総鉄イオン(Fe2++Fe3+) 10mg以上
マンガン(II)イオン(Mn2+)(第一マンガンイオン) 10mg以上
水素イオン(H+) 1mg以上
臭素イオン(Br−) 5mg以上
ヨウ素イオン(I−) 1mg以上
フッ素イオン(F−) 2mg以上
ヒ酸水素イオン(HAsO42−)(ヒドロヒ酸イオン) 1.3mg以上
メタ亜ヒ酸イオン(HAsO2−) 1mg以上
総硫黄(S) 1mg以上
メタホウ酸(HBO2) 5mg以上
メタケイ酸(H2Sio3) 50mg以上
炭酸水素ナトリウム(NaHCO3) 340mg以上
ラドン(Rn) 20×10−10
ラジウム塩(Raとして) 1×10−8mg以上

2. 療養泉

療養泉とは、温泉の内、特に治療の目的に供しうるもので、次表の温泉又は物質を有するものと定義されています(昭和53年5月環境庁自然保護局長通知)。

3. 正しい温泉の入浴法

 温泉旅館の浴場などには、温泉の成分や注意事項などが掲げられていますが、お気付きでしょうか。これは、温泉法第13条の「温泉の公共の浴用又は飲用に供するものは、施設内の見易い場所に、温泉成分、禁忌症(利用してはいけない症状)及び入浴又は飲用上の注意を掲示しなければならない」という規定に基づいて行われているものです。
 この規定は、温泉の効用は成分を異にすることによって千差万別であり、不適切な利用によってはかえって健康を損ねる怖れもあるために必要な事項の掲示を義務付けているものです。しかし実際には分析用に採取された温泉サンプルが温泉の使用される浴場の温泉蛇口からのものでなくて、そこから離れた温泉源のものであったり、近年温泉地に広く普及している温泉の集中管理方式によって、配湯される温泉が当該分析表記載の泉質とは著しくかけ離れたものになっている温泉が少なくない、といった点にも留意する必要があります。

温泉の一般的禁忌症

「温泉浴」急性疾患(とくに発熱時)、急性期の結核、悪性腫瘍、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、呼吸不全、腎不全、出血性素因、高度の貧血、その他病勢進行性の疾患や妊娠初期・末期などの場合


温泉療法上の注意点

1.温泉療法を始める場合、最初の数日は入浴回数は1回/日とし、その後は体調に準じて1〜3回/日とする。
2.保養・療養のための滞在期間は3週間が原則であるが、1〜2週間でも相応の効果は期待できる。
3.温泉療法の開始後3〜7日に湯あたり(全身倦怠感、食欲不振、微熱、発疹など)が現れることがある。この場合、入浴回数を減らすか、中止すれば症状は消失する。
4.温泉浴に際してはつぎの点に注意する。
 1)入浴は連続10分を超えない程度で反復する。高齢者では38〜40℃、1回3〜5分の微温浴反復入浴がよい。
 2)高齢者では心臓や肺に負担をかける首までつかる全身浴は避け、半身浴が望ましい。
 3)入浴中は安静を守る。
 4)血圧の急激な変動を防ぐために、緩徐な入出浴を心掛ける。
 5)入浴前後には水分(総量コップ2杯程度、イオン飲料がベター)をとり、出浴後は湯冷めに注意して30〜90分横臥する。
5.食事の直前・直後の入浴は避ける。
6.飲酒後の入浴はしない。

飲用上の注意点

 わが国の飲泉にかかわる保健・衛生学的管理は必ずしも充分とはいい難く、最近では温泉のレジオネラ菌検出頻度は決して低くない点が明らかにされています。また飲泉に関するこれまでの、わが国における医学的研究も十分とはいえません。このような現状から飲泉を積極的に薦める理由はありませんが、それでも飲泉を試みたい人は下記の点に注意してください。
1.飲泉所に飲泉許可証が掲示されていること。
2.下記泉質別の禁忌症に注意すること。
 1)ナトリウム-塩化物泉、ナトリウム-炭酸水素塩泉、ナトリウム-硫酸塩泉
   腎疾患、高血圧症、その他一般にむくみのある時
 2)マグネシウム-硫酸塩泉
   下痢の時
3.飲泉の1回量は一般に100mlないし200ml程度とし、1日量はおおむね1000mlまでとすること。
4.強酸性泉は歯牙を傷めるので水で希釈して飲用すること。




-温泉の休養・保養・療養効果-

温泉の作用

 温泉には、 (1)温熱、(2)静水圧、(3)浮力・粘性、(4)化学・薬理、(5)非特異的変調 といった5つの作用があります。

(1)温熱作用
微温浴は身体に鎮静、鎮痛的にはたらき、神経系、循環器系などの興奮を抑える作用があります。これに対し、高温浴(42℃)は興奮的にはたらき、神経系、循環器系を刺激します。温泉療養に際して、これら浴温度の使い分けは極めて大切なこととなります。

(2)静水圧作用
首までつかる全身入浴では、心、肺に水圧がかかって心臓への負担を増加させます。しかし半身浴ではこの心肺負荷はなくなる一方、下肢表面の静脈を圧迫して血管内を流れる血液を押し上げて心臓への血液還流を促します。心臓内圧が上昇すると心房性ナトリウム利尿ホルモンの分泌が高まり、尿生成が促されます。それぱかりではありません。心還流量の増加は心臓からの拍出量を増やし、腎血流量を増加させてこれも尿生成を促がすこととなります。このように入浴の深さによって体への影響は大変違ってきます。

(3)浮力・粘性
浮力により体重はおよそ1/9となり、温泉の中ではゆっくりした運動が極めて容易に出来るようになる一方、急速な運動は温泉水の粘性によって大きな力を必要とするようになります。脳梗塞や関節リウマチなどの運動機能に障害のある人達の治療に、この浮力を利用した運動浴による機能回復訓練が国内の多くの温泉プールで今盛んに行われています。

(4)化学・薬理作用
硫黄泉、二酸化炭素泉といった温泉は血管を拡張させて全身の血行を促進させる強い働きをもっています。温泉には種々の化学物質が溶けていて、これらの成分がそれぞれ特有の薬理的効果を体にもたらします。そのうちでもとくに保温効果は広く知られており、前述のような皮膚血管を刺激して血行を促す、皮膚表面を被覆して発汗・体温放散を抑える、などの温泉成分の働きによって保温効果をもたらすと考えられています。温泉にはこの保温作用以外にも種々の作用のあることが指摘されていますが、不確かなものも少なくありません。科学的検討によって今後さらに多くの泉質別の効果が明らかにされていくことが期待されています。

(5)非特異的変調作用
温泉に入り、温泉地に滞在することによって体内リズムが修復、正常化され、体調が整えられてきます。この作用は泉質とは関係なく、温泉地に一定期間(3〜4週間)生活することによってえられるものです。

 温泉(地)は以上のような作用が総合されて体に作用します。このうちとくに温泉に共通する最も特有なものは前述したように、温熱作用による保温効果で、この程度は泉質によっていろいろ違ってきます。末梢血管が温熱と化学成分によってより強く、より長く拡張しつづけ、そのため豊富な血液が体の隅々まで流れ込んで酸素や栄養物質を組織に送り込む一方、組織に溜まった炭酸ガスや代謝産物・疲労物質を速やかに運び出して疲労回復をもたらし、心身をリラックスさせ、体をリフレッシュさせてくれるのです。

 温泉のもつもう1つの重要な働きは、人の体内リズムを整えてくれる変調作用です。そもそもヒトの体内活動はおおむね1日を周期とするリズムで動いています。毎日ストレスの多い生活を送っていると、体内の種々の活動リズムが生来もっているパターンからゆがめられ、乱れがちとなっています。温泉地に一定期間滞在して温泉につかり、規則正しい毎日を送ることによってこのリズムは修復され、正常化されて、体調は整えられてくることが分かっています。温泉地のもつこの変調作用は人々の健康を取り戻し、病気から体を守ってくれる保養効果をもたらしてくれるのです。これこそ今わが国で温泉に最も期待されるものなのです。しかしこの効果をえるためには温泉保養地としてのいくつかの条件があります。その1つは温泉保養地としての最低条件(一定期間過ごせる保養地であること)と、もう1つは適切な保養が出来るしっかりとしたシステムが確立されている必要があります。

温泉基礎知識


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